不動産コラム

引っ越しの掃除はどこまでするべき?退去するときの掃除方法や必需品とは

2023/05/12

引っ越しをするときは、荷造り作業や転居手続きで大忙し。そのため、引っ越し掃除は「できるだけ簡単に済ませたい!」というのが正直な気持ちですよね。


しかし、退去時に掃除をしないと、敷金の返金額が減る・高額請求が発生するなどのトラブルに巻き込まれる可能性があります。


この記事では、引っ越しのときに掃除すべき理由やどこまで掃除するべきかをわかりやすく解説しています。その他、具体的な掃除方法や注意点もご紹介していますので、引っ越しの際はぜひ参考にしてください。

退去時の引っ越し前に掃除は必要?

結論からいうと、借主(退去者)は引っ越し前に掃除をするべきです。ただし、義務ではありません。退去後に、ハウスクリーニング業者が清掃をおこなうためです。


では、なぜ掃除をするべきなのでしょうか。理由や注意点を解説します。

引っ越し前に掃除をしたほうがよい理由

引っ越し前に掃除するべき理由は次の2つです。

  • 貸主へのマナー
  • 敷金の返金額が増える

借りた部屋をきれいにして返すのは、貸主へのマナーです。いくら家賃を払っていたとはいえ、借りた物を汚い状態で返されたら貸主側もよい気分がしません。退去立ち会い時にもめる原因にもなります。


もう1つは、きちんと掃除をすることで、ハウスクリーニング費用・修繕費用が安く済み、敷金の返金額が増える可能性があるためです。敷金とは入居時に支払う初期費用の1つで、退去時に返還されるものです。返金額は下記のように決まります。


敷金の返金額=初めに支払った敷金−退去費用(修繕や清掃に使われる費用)


掃除をしないで部屋を汚したまま引っ越すと、借主が負担すべき修繕・清掃費用が増えて敷金の返金額は少なくなります。私物を残した場合も、処分費用がかかります。敷金をたくさん返金して欲しい場合は、掃除・修繕をしてから引っ越しましょう。


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敷金礼金とは?ゼロ物件のデメリットや返ってくる仕組みも解説【ROOMSELECT】

賃貸借契約書の確認も必要

敷金の返金ルールは、物件の契約内容により異なります。物件によっては、『掃除をしなくてよい』といわれたり、借主がいくら掃除しても退去費用が変わらなかったりする場合もあります。


敷金の返金ルールは、賃貸借契約書に明記されていますので、掃除をする前に内容をしっかりと確認しましょう。

引っ越しの掃除はどこまでするべき?

借主の『原状回復義務』について知れば、どこまで掃除をすべきかがわかります。まずは、原状回復の意味や具体例をご紹介します。

原状回復とは

原状回復とは、『借主が汚したり、損傷させたりした部屋を入居時の状態に戻すこと』です。ただし、通常損耗や経年変化については、借主側に原状回復義務はありません。


つまり借主が掃除・修繕すべき範囲は『故意や過失・注意不足で起こった汚れやキズ』であり、『普通に住んでいてできた汚れやキズ』はもとにもどす必要がありません。

借主負担・貸主負担の具体例

原状回復の対象になる例(=借主負担)と経年変化にあたる例(=貸主負担)を具体的にご紹介します。借主負担の具体例が、引っ越しのときに掃除・修繕すべき範囲です。

■ 借主負担と貸主負担の具体例
具体例
借主負担 掃除不足による汚れ タバコの臭い・ヤニのよる汚れ ペットによるキズ・臭い・汚れ 窓の閉め忘れによる床・窓枠のカビ・劣化 落書き 物を落としてできたキズ 不適切な使用による設備の故障 など
貸主負担 家電製品による電気ヤケ 日照による畳・壁紙の変色 不適切な使用による設備の故障 地震で破損したガラス  など

【場所別】引っ越し前のお掃除方法

上の表を参考にしながら、引っ越し前のお掃除方法や注意点を場所別にご紹介します。(※設備の素材により、適した洗剤や掃除方法が異なる場合があります。)

1.キッチン

2.浴室

3.トイレ

4.洗面所

5.壁・天井・床

6.ベランダ

1.キッチン掃除はどこまで?

キッチン掃除で特にチェックすべき場所は、

  • ガスコンロ
  • 換気扇
  • シンク
  • 排水口

などです。


ガスコンロや換気扇にこびりついた油汚れには、アルカリ性洗剤や重曹がおすすめです。換気扇のパーツは取り外し、つけ置きしてから洗い流しましょう。ガスコンロが自分の所持品であれば取り外し、ガス台の上もきれいに拭きます。


シンクの油汚れは、食器用洗剤(中性洗剤)でほとんど取れます。頑固な場合はアルカリ性洗剤や重曹を使いましょう。水垢や石けんかすの汚れには、クエン酸水やステンレス用クレンザーがおすすめです。


排水口のぬめり汚れには、塩素系漂白剤を吹きかけて10分程度放置し(商品の使用方法に準ずる)、水で流せばきれいになります。

2.浴室掃除はどこまで?

浴室掃除で特にチェックすべき場所は、

  • 壁や床
  • 換気扇
  • 排水口

などです。


浴室の一般的な汚れは、浴室用洗剤で落とします。水垢が気になる場合は、クエン酸水を使いましょう。頑固な黒カビには、市販のカビ取り剤を吹きかけ、20分ほど放置してから洗い流します(商品の使用方法に準ずる)。手袋やマスクをして、しっかり換気をしながら掃除しましょう。


換気扇はフィルター(カバー)を取り外して掃除機できれいにします。排水口の髪の毛を取り除き、塩素系漂白剤でぬめりを除去しましょう。


シャワーヘッドを自分で取り替えた場合は、もとのヘッドに戻しておきます。

3.トイレ掃除はどこまで?

トイレ掃除で特にチェックすべき場所は、

  • 便座
  • 便器
  • 壁や床

などです。


便座が取り外せる場合は、取り外してきれいに掃除します。一般的な汚れはトイレ用洗剤で落とせますが、便器裏の黄ばみが気になったらクエン酸や尿石専用洗剤を使いましょう。壁や床・便座の裏側は埃を取り除き、トイレ掃除用シートで拭きます。


温水洗浄便座を自分で取り付けた場合は、外しておきましょう。

4.洗面所掃除はどこまで?

洗面所掃除で特にチェックすべき場所は、

  • 洗面ボウル
  • 蛇口
  • キャビネット
  • 照明器具

などです。


洗面ボウルの汚れは浴室用洗剤や中性洗剤で落とせます。黒ずみや水垢が気になる場合は、クエン酸水を使いましょう。他の場所と同じく、蛇口はクレンザー、排水口は塩素系漂白剤を使います。


キャビネットは固く絞った雑巾で掃除し、照明器具は埃を取ります。

5.壁・天井・床掃除はどこまで?

壁・天井で特に気になる汚れがない場合は、固く絞った雑巾で軽く拭けばOKです。埃のたまりやすい窓枠は歯ブラシを使い、窓ガラスは濡れた新聞紙で拭くと、手垢が取れやすくおすすめです。


キッチン・ダイニング周辺や電気スイッチなど油・皮脂汚れのある場所は、住まいの洗剤を使います。窓近くの壁にカビが発生している場合は、塩素系漂白剤に浸した歯ブラシで軽くこすりましょう。タバコのヤニが気になる場合は、重曹水を吹きかけます。(※洗剤を使うときは、変色などがないかを確認してから使いましょう。)


壁に落書きがある場合は、借主負担になりますのでできるだけ消しましょう。自分で壁紙を貼った場合は取り外します。床掃除は、掃除機で埃を取ったあとに拭き掃除をしましょう。

6.ベランダ掃除はどこまで?

まず掃き掃除し、汚れが目立つ場合は中性洗剤やデッキブラシを使います。コケや黒カビが生えている場合は、市販の除去剤を使って除去しましょう。


排水溝のゴミを取り除き、私物を撤去します。鉢植えやレンガ・物干し竿など、私物を忘れがちな場所のため要注意です。

引っ越しの掃除でよくあるQ&A

引っ越しの掃除に関して、よくある質問にお答えします。

掃除で原状回復できない凹みやキズはどうする?

DIY専門店などで、床専用のクレヨンや壁の穴を塞ぐシール材やパテなどを購入して修繕する方法があります。ただし、素人が下手に修繕するとキズが悪目立ちしたり、変色したりする恐れもあります。


修繕費はかかりますが、DIYの知識がない方は無理をせず貸主(管理会社)に任せたほうがよいでしょう。

新居の掃除も必要?

引っ越し先の新居でも、家具を搬入する前に掃除をしたほうがよいでしょう。

  • ハウスクリーニング後にたまった汚れを掃除できる
  • 防虫対策ができる
  • 新居の状態をチェックできる

などのメリットがあるためです。


空き部屋の期間が長かった部屋は、特に汚れや湿気がたまっていたり、害虫がすみついていたりします。家具や荷物を部屋に入れると掃除や防虫対策がしにくくなるため、引っ越し前におこなうことをおすすめします。


掃除の際に、部屋のキズ・汚れ・不具合をチェックできるのもメリットです。それらを見つけたら必ず写真を撮っておき、貸主(管理会社)に相談しましょう。入居前に修繕しない場合は、退去時に修繕請求を拒否する証拠になります。

引っ越し掃除の必需品は?

引っ越しの掃除で準備しておきたい必需品は次のとおりです。

  • 掃除機
  • 雑巾(水拭き用・乾拭き用)
  • ゴミ袋
  • 新聞紙
  • 歯ブラシ
  • スポンジ
  • 手袋
  • 洗剤(中性・アルカリ性・塩素系漂白剤など)
  • 重曹水
  • クエン酸水

その他、お掃除用シートやデッキブラシ、住居用洗剤などは必要に応じて買い足しましょう。

掃除したのに高額請求されたらどうする?

納得のいかない高額請求をされたら、

  • 貸主(管理会社)と交渉する
  • 消費者センターに相談する
  • 民事調停

などをおこないます。


貸主(管理会社)と交渉するときは、国土交通省の『原状回復のガイドライン』を参考にしましょう。民事調停では、調停委員や裁判官をまじえて話し合いができるため、問題が解決しやすくなります。

まとめ

物件を退去するときは、引っ越し前にきちんと掃除をしましょう。必須ではありませんが、貸主へのマナーであり、敷金がたくさん返ってくる可能性もあるためです。敷金のルールは物件ごとに異なりますので、賃貸借契約書で確認しましょう。


引っ越し掃除をどこまですべきかは、貸主の『原状回復義務』の範囲で判断できます。掃除不足による汚れや、たばこ・ペットによる汚れや臭いは貸主負担になりますので、しっかりときれいにしてから退去するようにしましょう。

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