不動産コラム

定期借家契約と普通借家契約の違いは?メリット・デメリットも解説

2022/06/10

お部屋を借りるときは貸主と借主の間で契約(賃貸借契約)を結びます。

契約の多くは「普通借家契約(ふつうしゃっかけいやく)」ですが、中には「定期借家契約(ていきしゃっかけいやく)」と呼ばれるものもあります。

普通借家契約は、当初の契約期間(多くが2年間)が満了しても、原則として「更新」ができ、同じお部屋に住み続けることができる契約形態です。お部屋を借りるときは、一般的にこの普通借家契約になります。

定期借家契約は、契約期間が満了したあとは「更新」がなく、そこで契約が完全に終了する契約形態です。普通借家契約と違い、長く住むことを前提としておらず、一定期間だけ住むことになります。

定期借家契約は、普通借家契約と比べると物件数は多くありません。2020年の東京23区の賃貸物件全体に対する定期借家の割合は次のようなものでした。

  • ・賃貸マンション…5.2%
  • ・賃貸アパート…4.8%

(出典:「定期借家物件」の募集家賃動向(2020年度)


同じように2020年の名古屋市の賃貸マンションでは、全体の1.5%が定期借家契約でした。

このため、お部屋探しで定期借家契約という言葉を目にする機会は少ないかもしれません。
でも、定期借家契約ならではのメリットもあるので、お部屋探しの選択肢を増やすために内容を知っておいて損はありません。

今回は「定期借家契約」の特徴とメリット・デメリットについて説明します。

定期借家契約の特徴とは

定期借家契約(定期建物賃貸借契約)は、お部屋を借りるときの契約形態のひとつで、日本では平成12(西暦2000)年3月から始まりました。「定借(ていしゃく)」と省略して呼ばれることもあります。

定期借家契約の対象のお部屋は、戸建や分譲マンション、賃貸マンション、賃貸アパートなど様々です。事業用のテナント物件にも多く使われます。

定期借家契約は数週間や数ヶ月などの短い期間の契約も可能なため、マンスリーマンションやウィークリーマンションなどの契約でも使われます。

貸主が定期借家契約でお部屋を貸し出すのは、次のような場合があります。

  • 自宅を転勤の期間だけ貸し出したい
  • 物件を取り壊す予定がある
  • 物件の売却を考えている
  • 別荘やセカンドハウスの使わない時期だけ貸したい
  • 空いた実家を自分が住むまでの間だけ貸したい
  • 好ましくない入居者が長く住むのを防ぎたい

多くは自己所有している物件を自分が使わない間の貸し出しです。アパートやマンションなどの集合住宅の場合には、入居者の質を保って建物のイメージを良くしたい場合などに使います。

そんな定期借家契約の特徴を、普通借家契約と比較して紹介します。

契約方法

  • 普通借家契約…口頭でも可
  • 定期借家契約…必ず書面で行う

普通借家契約は、口頭でも契約が有効に成立します。ただし、実際には契約書を取り交わすことがほとんどです。

定期借家契約は、必ず契約書などの書面を取り交わして契約を行わなければなりません。

あわせて、契約書などとは別に「契約の更新がなく、期間の満了により契約が終了すること」を書面で説明することが必要です。この説明がされなかった場合は普通借家契約となります。

契約期間

  • 普通借家契約…1年以上の期間
  • 定期借家契約…期間の制限なし

普通借家契約の契約期間は「1年以上」で定められます。実際には「2年間」の契約とする場合がほとんどです。
なお、普通借家契約の契約期間を1年未満とした場合、「契約期間のない契約」として扱われます。

定期借家契約は契約期間を自由に決めることができます。半年間などの短期間の契約や5年間などの長期間の契約も有効です。

定期借家契約の終了に当たって、貸主は契約期間満了の1年前から6月前までの間に借主に契約が終了する旨の通知をする必要があります。この通知をしないと借主が契約期間終了後にお部屋に住み続けていても、貸主は契約が終わったことを主張して退去させることができません。その後に契約期間が満了であることを通知すると、通知してから6ヶ月後に契約を終了することができます。

中途解約

  • 普通借家契約…貸主・借主からいつでも可能
  • 定期借家契約…原則不可

普通借家契約は、貸主・借主から契約期間中のいつでも解約を申し出ることができます。ただし、貸主から解約を申し出る場合は借主の家賃の滞納などの「正当事由」が必要となります。

定期借家契約は、原則として貸主・借主ともに契約の途中で解約を申し出ることができません。
ただし、借主は次の2つの条件に該当すれば中途解約をすることができます。

・借りたお部屋の床面積が200平方メートル未満
・転勤、療養、親族の介護その他やむを得ない事情により、借主が建物を自己の本拠として使用することが難しくなった


このとき、借主が解約を申入れてから1ヶ月後以降に定期借家契約は終了します。

そのほか、契約時に中途解約ができるという特約を結んだ場合も中途解約ができます。

契約の更新

  • 普通借家契約…更新あり
  • 定期借家契約…更新はないが、「再契約」ができる場合がある

普通借家契約は、契約満了時に契約の「更新」ができます。その際、多くは「自動更新」となり、賃料や契約期間など同じ条件でお部屋に住めます。
貸主が更新を希望しない場合には、正当事由(借主の家賃の不払いなど)が必要とされるため、ほとんどの場合に更新して住み続けることができます。

定期借家契約は、契約の更新ができません。契約期間が満了すると契約は終了し、退去する必要があります。
ただし、物件によって「再契約」をすることができ、この場合は継続して同じ物件に住むことができます。
しかし、再契約には貸主の合意が必要になり、確実に再契約ができるとは限りません。

このように、継続して同じお部屋に住めるかどうかについて貸主に決定権がある点が、原則更新して住み続けることができる普通借家契約と定期借家契約の大きな違いです。

契約期間中の賃料の増減

  • 普通借家契約…増減の申し入れ可能
  • 定期借家契約…増減の申し入れ不可の特約が有効

普通借家契約は、貸主・借主から契約期間中の賃料の増減の申し入れができます。これをできないとする特約は無効です。

定期借家契約も普通借家契約同様に貸主・借主から賃料の増減の申し入れができます。ただし、これをできないとする特約が有効になる点が普通借家契約と違う点です。

この特約があると、長くお部屋を借りていて建物が古くなったり、周辺の環境が変わったりして、支払っている家賃が高いと考えられる状況でも、賃料を減額する申し入れができないことになるので注意が必要です。

定期借家契約の3つのメリット

定期借家契約の物件を借りるときのメリットを3つ紹介します。

  • 家賃や諸費用を抑えられる
  • 質の高いお部屋を借りられる
  • 入居者の質がいい

家賃や諸費用費用を抑えられる

定期借家契約は契約期間が短い場合や、更新ができないなど、借主に不利な条件があります。そのため近隣の相場と比べて賃料が低く設定されていることがあります。
そのほか、礼金や敷金などの初期費用がかからない、取り壊し予定の物件であれば退去費用(原状回復費用)がかからないこともあります。

質の高いお部屋を借りられる

定期借家契約では貸主が自宅用に購入した戸建や分譲マンションを借りられることがあります。貸主が一時的な転勤などで、自宅を離れる必要がある場合などです。この場合のお部屋は賃貸用の物件と比べて、構造や内装、設備などの質が高い場合が多いのです。

入居者の質がいい

再契約ができる定期借家契約の場合、貸主が入居者の質を保つことを目的にしていることもあります。
再契約するかを貸主が選べるため、アパートやマンションなどでトラブルを起こすような問題のある入居者との再契約をしないことができます。
このような物件は入居者の質が良いため、他のお部屋よりも近隣トラブルの心配が少なく、安心して住むことができます。

定期借家契約のデメリット

定期借家契約の物件を借りるときに気をつけたいデメリットがあります。特に気をつけたい点は次の3つです。

  • 中途解約ができない
  • 長く住むには不向き
  • 設備の故障の対応がない

中途解約ができない

定期借家契約は前出の特定の理由に該当する場合や、中途解約に関する特約がない場合は、急な転勤などで住み続けるのに都合が悪くなっても、契約の途中で解約ができません。
もし解約ができた場合でも、残りの契約期間の賃料を請求されることがあります。

長く住むには不向き

原則として契約の更新がない定期借家契約ですが、再契約をして継続して住める場合もあります。しかし、この場合でも再契約は貸主から断られてしまうこともあるため、長く住みたい場合には定期借家契約は不向きです。

設備の故障の対応がない

取り壊しを予定している定期借家契約の物件などの場合、エアコンや照明器具などの設備が故障をしても交換や修理などの対応をしてもらえないことがあります。入居中の設備故障に対する対応について、契約書の内容をよく確認する必要があります。

定期借家契約のまとめ

定期借家契約は、住める期間がしっかり決まっているお部屋の契約形態のひとつです。
初期費用や賃料が安いなどのメリットがあります。

ただし、更新ができないため長く住むには向かないなど、気をつけなければならない点もあります。
期間の決まっている単身赴任や短期間の仮住まいなどの場合は、普通借家契約のお部屋よりもお得に借りられる可能性があります。

それぞれの契約の内容をしっかり理解して、自分に合ったお部屋探しに役立てましょう!

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