不動産コラム

賃貸の退去立ち会いは何するの?必要な準備・流れ・注意点を徹底解説

2022/12/23

この記事では、賃貸物件を退去するときにおこなう『立ち会い』の流れやチェックポイント、注意点などを徹底解説しています。

初めて立ち会いをする方は、その不安から「何だか怖い」と感じる方も多いのではないでしょうか。しかし『立ち会い』は、あなたをトラブルから守ってくれることもあります。

この記事を読めば、不当請求などのトラブルを防ぐ『正しい立ち会い』の知識が身につきます。事前準備をしっかりして、スムーズに退去を進めましょう。

退去立ち会いの目的とは

退去時の立ち会いは、『退去後の修繕費用をだれが、いくら支払うのか』を決めるためにおこなわれます。部屋の状態を借主(入居者)と貸主(または管理会社)の両方で確認し、修繕内容と費用の負担割合についてお互いが納得するための作業です。

借主負担で修繕が必要な場合は、敷金から支払われます。足りないときは、追加徴収があります。立ち会いをおこなうことで、貸主から一方的に費用を請求されるなどのトラブルを防ぐことができます。

退去立ち会いで必要な4つの知識

初めて立ち会いをするときは、

  • どんな費用がかかるのか
  • 誰が来るのか
  • 何をチェックされるのか

などわからないことばかりですよね。そんな方のために、立ち会い前に知っておきたい4つの知識をご紹介します。

1.賃貸借契約書の確認

2.原状回復義務とは

3.立ち会いメンバー

4.立ち会いのチェックポイント

1.賃貸借契約書の確認

『どんな費用がかかるのか』を知るためには、まずは賃貸借契約書を確認しましょう。

賃貸借契約書とは、アパートやマンションなどの物件を借りるための契約書で、賃貸契約において最も効力を持つ書類です。賃貸条件がくわしく記されており、退去時の修繕ルールについてもこの契約書に明記されています。

契約書を事前に確認しておき、立ち会いで請求される費用が、賃貸借契約書にそった内容かどうかをチェックしましょう。

2.原状回復義務とは

賃貸物件を退去するときは、借主が汚したり、損傷させたりした部屋を『原状回復』させる義務があります。しかし、ここで注意するポイントは、通常損耗や経年変化については、原状回復義務の範囲外ということです。

通常損耗・経年変化とは『普通に住んでいてできた汚れやキズ』のことで、次のようなものがあります。

  • 家具の設置による床・カーペットのへこみ
  • 家電製品の後部壁面の黒ずみ(電気ヤケ)
  • 地震で破損したガラス
  • 日照による畳・壁紙の変色  など

借主に原状回復義務がある『故意や過失・注意不足で起こった汚れやキズ』の例がこちらです。

  • 引っ越し作業でできたキズ
  • 不適切な手入れ・用法違反による設備の故障
  • タバコの臭い・ヤニのよる汚れ
  • ペットによるキズ・臭い
  • 窓の閉め忘れによる床・窓枠の劣化  など

この違いを知っておけば、不当な請求があった場合でもうまく交渉することができます。

ただし、この法律よりも賃貸借契約書の方が強い効力をもっています。賃貸借契約書に『特約』として修繕やハウスクリーニングのルールが明記されている場合は、その内容に従う必要があります。
(契約書の内容が明らかに不当である場合や不明確である場合は、交渉の余地があります。)

3.立ち会いメンバー

退去時の立ち会いメンバーは、一般的に

1.借主(入居者)

2.管理会社の担当者

の2名です。ただし、場合によっては貸主(大家)やリフォーム業者が参加することもあります。

リフォーム業者や貸主が立ち会うことで、

  • 見落としがなくなる
  • 具体的な費用がわかる
  • 合意がはやい

などのメリットがあります。

4.立ち会いチェックポイント

次に、立ち会い時の主なチェックポイントをご紹介します。
チェック項目を知って、掃除や紛失物の捜索など、事前にできる対策をしておきましょう。

  • 壁紙・床のキズ
  • キッチンの汚れ・焦げつき(コンロ・換気扇など)
  • 排水口の汚れ・つまり
  • 窓枠・網戸の損傷
  • 設備の故障・部品の紛失(エアコン・照明器具・トイレなど)
  • 荷物の残り  など

掃除不足による汚れ・臭いは借主の過失になりますので、事前に掃除をしておきましょう。特にタバコが原因の臭い・汚れ・黄ばみなどは借主負担になります。

また、設備が故障している場合は、いつ・どのように故障したのかを説明できるようにしておくとよいでしょう。経年劣化が原因の場合は請求対象になりませんが、結露が原因で窓枠が損傷した場合や、掃除不足で設備が故障した場合などは借主負担となります。

その他、リモコンや、鍵などを紛失した場合や、荷物の残りを処分してもらった場合も費用を請求されますので要注意です。

退去立ち会いはいつやる?

退去の意思を伝えてから、立ち会いまでの流れをご紹介します。それぞれの注意点もまとめましたので参考にしてください。

1.退去通知

2.退去手続き

3.引っ越し・掃除

4.立ち会い

1.退去通知

退去が決まったら、管理会社や貸主にできるだけ早く通告しましょう。退去連絡は、一般的に「退去日の1〜2ヶ月前まで」と決まっています。賃貸借契約書に詳しく記載されていますので確認してください。

通告が遅れると退去後も家賃が発生し、退去物件と新居物件の『家賃の二重支払い』が発生してしまいますので要注意です。

2.退去手続き

退去通告をしたあとは、

  • 退去スケジュールの決定(引っ越し・立ち会い・退去日など)
  • 退去届(解約通知書)の提出
  • 住民票の転出届
  • 郵便物の転送届
  • 電気・ガス・水道の転居手続き
  • 電話・インターネットの移転手続き

などを進めます。

引っ越し・立ち会い・退去は同じ日に終わらせるとラクですが、無理は禁物です。当日にバタバタしないよう、余裕のあるスケジュールをたてましょう。

3.引っ越し・掃除

引っ越しをスムーズに進めるため、荷物の梱包は前日までに終わらせましょう。近所への挨拶もすませておくとよいでしょう。

退去後にクリーニングが入るため、掃除は不要と思うかもしれません。しかし、掃除不足による借主の過失を請求されないためにも、一般的な掃除はしておきましょう。

4.立ち会い

立ち会いは、引っ越しが終わり、部屋に借主の私物が何もない状態でおこなわれます。立ち会い後に鍵を返却したら、部屋に入れなくなるので注意しましょう。

立ち会い時間は約30分間で、昼間に行うことが多いです。退去時にはすでに電気がつかなかったり、照明を外したりしているため、暗くなると確認作業ができないためです。立ち会いの詳しい流れは、次の章でご紹介します。

退去立ち会いの流れと持ち物

この章では、退去立ち会い当日の流れと持ち物についてご紹介します。

立ち会い当日の流れ

退去立ち会いの流れは次のとおりです。

1.担当者が到着

2.部屋の確認

3.修繕内容を確認

4.合意してサイン

5.鍵の返却

6.敷金返却(追加請求)

立ち会い予定日時に担当者が部屋に到着したら、担当者と借主で部屋の中をチェックします。このとき、入居時に撮影した写真があると、だれがいつ付けたキズ(汚れ)なのかを明確にできます。

修繕内容や費用の負担割合を確認し、問題がないか慎重に判断しましょう。このとき、

  • 賃貸借契約書
  • 原状回復義務
  • 減価償却
  • 修繕単位

などをチェックし、疑問がある場合はその場で質問してください。

【減価償却とは】
物の価値は、時の経過により減少するという考え方です。借主が費用を負担するときは、資産の耐用年数に応じた費用を考えましょう。

問題がない場合は、立ち会いに関する書類にサインをします。この時点では、具体的な金額がわからないことも多いため、心配な場合はいったん保留し、詳しい見積もりがでてからサインをすることもできます。

一度サインをすると、負担費用に関して合意したことになりますので、注意しましょう。その後、鍵を返却して立ち会い終了です。修繕費用が敷金より少なかった場合は、約1ヶ月後に指定した口座に振り込まれます。

立ち会い時の持ち物

退去立ち会いには、次のものを持参しましょう。

  • 筆記用具
  • 印鑑
  • 口座番号
  • 部屋の鍵(スペアキー)
  • 賃貸借契約書
  • 入居時の写真
  • スマホ
  • 身分証明書

筆記用具・印鑑はサイン時に必要になります。口座番号は、敷金の返却がある場合に記入します。部屋の鍵を返却する際は、スペアキーがないかも確認しましょう。

賃貸借契約書や入居時の写真は、費用負担の判断材料になるため、あったほうがよいものです。立ち会いや書類を記録したい場合は、スマホで録音・撮影しておくとよいでしょう。立ち会うときに本人確認をすることもありますので、身分証明書も一応用意しておきましょう。

退去立ち会いでよくあるQ&A

最後に、退去立ち会いでよくある3つの質問にお答えします。

Q1.立ち会い不要といわれたら?

管理会社や大家さんによっては、『立ち会いなしが可能』といわれることがあります。その場合でも、立ち会いはおこなうことをおすすめします。

敷金が全額返金されるなら問題ありませんが、あとで一方的に修繕費用を請求されるなどのトラブルがおこる可能性があるためです。

Q2.立ち会いに参加できない場合は?

契約者本人がどうしても立ち会えない場合は、代理人をたてることができます。代理人は委任状を持参するほか、

  • 契約者の要望
  • 入居時の状況
  • 契約内容

などを事前にしっかりと把握しておきましょう。

Q3.立ち会いで不当な請求をされたら?

高額な修繕費を要求された・納得できないなどの場合は、まずは管理会社や貸主に説明をもとめ、交渉しましょう。話し合いに応じてもらえない場合は、

  • (公財)日本賃貸住宅管理協会
  • 消費者センター
  • 弁護士

などに相談しましょう。弁護士は有料ですが、訴訟を起こせば不当請求を防ぐ事ができます。

まとめ

退去立ち会いは、一方的な修繕請求などのトラブルを防ぐために必要な作業です。 自分が損をしないためにも、立ち会いまでに

  • 賃貸借契約書
  • 借主が負担すべき費用
  • 立ち会いのチェックポイント

などの知識を身につけておきましょう。

立ち会い当日に疑問を感じることがあれば、担当者にその場で確認することが大切です。借主・貸主が共に納得できる『正しい立ち会い』をおこないましょう。

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